詩集「セカンドムーヴメント」

緋熊熊五郎の詩作ペンネーム、緋熊加微由の詩集

光球


「光球」

その白い天使は

翼を大きく拡げて夜の空を羽ばたき

闇に包まれた都市を見下ろしていた

生きとし生けるものが何千年もかけて積み重ねた

汗や垢、涙などをすべて呑み込んだ

静まり返った暗黒の都市を

今は動くものとて何一つなく

廃墟と化した瓦礫の山

そのところどころに尖塔が林立している

漆黒の闇の底から突如として出現し

浮かんでは真上の空へ飛び去っていく

目映いばかりの光球

それを捕まえようと目を凝らしている

ここは魂の苗床

捕えられた光球は天使の卵となり

こぼれた光球は下界へと落ち

やがて人間として生を受ける

(opus41)

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