詩集「セカンドムーヴメント」

緋熊熊五郎の詩作ペンネーム、緋熊加微由の詩集

不機嫌なヴィーナス


「不機嫌なヴィーナス」

空気が凛として張り詰めた夜

白銀に輝く月の光を浴びながら

青白く佇む美の女神

顔は無表情でいてどこかしら

冷たい微笑を造っているように見える

激しい感情を心の裡に隠すのは何故

明るく朗らかだった貴女を

そんなにも不機嫌にしたのは誰

教えてほしいその訳を

沈黙をまとった石像のように

身じろぎもせず

時だけが漆黒の闇の中へ沈殿していく

空気も凛として張り詰めたまま

(opus046)

.