詩集「セカンドムーヴメント」

緋熊熊五郎の詩作ペンネーム、緋熊加微由の詩集

山小屋

f:id:higuma9056:20180828004049j:plain

「山小屋」

煙草を吸おうと八合目避難小屋を一歩出ると

激しく風が吹き荒び、なけなしの体温を一気に奪い去る

午後七時、岩手山、標高1,770m

闇の帳が落ち、見えるはずの満天の星も雲に遮られている

真夏だというのに寒さで身体が震え

歯はガチガチ鳴り、煙草を咥えることさえできない

慌てて小屋に戻ると温(ぬく)い空間が私を包み込む

風を防ぐ屋根、壁があり、暖かなストーブがあり、毛布に潜り込む

小屋は私をあやし、私は山を駆ける幸せな夢を見る

.

目覚めて朝食を摂り、社会に一歩足を踏み出すと

やはり激しく風が吹き荒び、僅かな活力を奪い去っていく

濁流に翻弄される木の葉のように一日の作業を終える

闇の帳が落ち、息も絶え絶えの星が微かに瞬く時

ポエトリーカフェでは心地よい空間が私を出迎える

言の葉は屋根、壁であり、人の心はストーブ、毛布である

カフェは私を癒し、私はイメージを操る幸せな夢を見る

(opus068)

.

写真は2018/7/22撮影、岩手山八合目避難小屋です。