詩集「セカンドムーヴメント」

緋熊熊五郎の詩作ペンネーム、緋熊加微由の詩集

人魚の涙


「人魚の涙」

あの日、君の目に浮かんだのは

人魚の涙、もうあと戻りはできない

どうして僕はもっと自分の心に

素直になれなかったのだろう

まるで思春期の男の子のように

どうして意地を張ってしまったのだろう

君の瞳を見て、君の手を握って

君を抱き締めることができなかったのだろう

二人で笑って、見つめ合っていれば

それだけで幸せだったはずなのに

君は尾を失くし、鱗を落とし

二本の足が生えてしまった

住む世界が違ってしまえば

もう心を通わせることは難しい

僕も流すことができるのだろうか

人魚の涙を

(opus053)

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