詩集「セカンドムーヴメント」

緋熊熊五郎の詩作ペンネーム、緋熊加微由の詩集

手紙

「手紙」暑くなってきましたね明日の天気予報も晴れですもうすぐ貴女と出会ったさわやかな夏がやってきますあの日どうしてあの場所にいて私に微笑んだのですか今も眠れぬ夜を過ごしています私の心をどうしようというのですか出口を求めて彷徨っていますもう…

詩論

文字を書き連ねていけば文章にはなるが、そこに芸術性がなければ文学にはならない。例えて言えば、報告書や論文は文字が連なっているが、文学ではない。芸術性については議論を要するところ。感性だけかといえば、定型詩においては感性だけではなく、定型に…

時の波

「時の波」寄せては返す時の波私の心も大きくうねるその度自分も変わっていくがそれは進化か退化なのか単なるメタモルフォーゼなのか私には知りようがないそれでも固まり彫像になるよりは常に新しい自分でありたい寄せては返す時の波今日も変わらず白いしぶ…

「春」桜の花が散り欅も桂も葉を広げて日に日に緑がその濃さを増し春がいよいよ深くなった身体の芯まで凍える冷たい雨を降らせた後水色に澄んだ青空は純白の帯状の雲を湛えている僕は一人その中に立ちそして問う何色に輝けばよいのかと(opus057).

波紋

「波紋」青い空と白い雲の下で湖畔に立つ緑の大樹水面は鏡のように影を映し出すふっーと風がそよぎ葉から露がしたたり落ち波紋がひとつまたひとつと音もなく拡がり重なってやがてもとの鏡に還るすべての物音が吸収された静寂の世界の中で肉体に捉われた私の…

「鏡」人はあなたの鏡あなたが人を愛せば人もあなたを愛しあなたが人を嫌えば人もあなたを嫌う人はあなたの鏡あなたは人の鏡人があなたを愛せばあなたも人を愛し人があなたを嫌えばあなたも人を嫌うあなたは人の鏡(鏡はあなたの人ではないよ(笑))(opus055).…

「桜」厳しく辛い冬が過ぎ暖かくのどかな春うらら雲ひとつとてない蒼天の満開の桜の樹の下で僕たちはやっと巡り会う敷き詰められた菜の花の上をそよ風に花びらがちらちらと舞い心も千々に乱れて揺れるそう君が…君だったのか僕の心は何も見えていなかった桜の…

人魚の涙

「人魚の涙」あの日、君の目に浮かんだのは人魚の涙、もうあと戻りはできないどうして僕はもっと自分の心に素直になれなかったのだろうまるで思春期の男の子のようにどうして意地を張ってしまったのだろう君の瞳を見て、君の手を握って君を抱き締めることが…

春風

「春風」春の陽気に誘われて暖かい日差しの中少し汗ばみながら歩く見上げれば信夫山ふくよかな姿を見て想い出すのは君の笑顔風に揺れる黒髪、そして香り世の中は暖かくなったけれど僕の心の中に春風が吹きその暖かさで根雪が溶けるのはいつになるのだろうか…

出会い

「出会い」世の中に偶然なんて何もないと云うでは君に出会ったのも必然?この地球(ほし)には80億もの人間がいて40億の男と40億の女がいてその順列組合せを考えるだけでも途方もなく気が遠くなるというのに巡り合うのは奇跡とも思えるのに予め決まっていたこ…

風になる

「風になる」北国だというのにこの数日暖かくて雪が随分溶けたと思ったら急に寒さが戻ったその日僕らはリフトでスキー場の山の斜面を登った山は上の方だけ頭を雲の中に突っ込み周囲一面霧に包まれホワイトアウトした風と共に細かな雪が降っては舞う僕らは思…

笑顔で明るく

「笑顔で明るく」サイコロを振り飽きた神サマは自らの魂を引き裂いて私達、人類を創出した故に神サマのちっぽけなカケラがどんな人の心の中にも棲みついている神サマは皆の不幸などというものは望んでやしないんだからいつも明るく笑顔で生きるうれしくなっ…

新世界

「新世界」夜明けの曙光とともに新しい地平線に向けて駆け出そうそこにはまだ見たことがない新しい世界が広がっているに違いない珍しい草花や木々面白い山川や風景そして愉快な仲間たち道のりは平坦ではないけれど力の限り前へ進もう陸が尽きて海岸に達した…

雪解け

「雪解け」心の真ん中にあった氷が大きな音を立てて砕け溶け落ちては大きな水流となって迸る全ての汚れを洗い流しながら残されたのは純白の光に満たされた純粋無垢の心(opus047).

不機嫌なヴィーナス

「不機嫌なヴィーナス」空気が凛として張り詰めた夜白銀に輝く月の光を浴びながら青白く佇む美の女神顔は無表情でいてどこかしら冷たい微笑を造っているように見える激しい感情を心の裡に隠すのは何故明るく朗らかだった貴女をそんなにも不機嫌にしたのは誰…

迷い道

「迷い道」優柔不断はこういう時に困る道がいくつにも分かれていてどれを選べばよいか悩むそれぞれがどこに通じているのかどれ位時間がかかるのか歩きやすいのか岩をよじ登らないといけないのか崖に出くわしたりしないのか心の中に考えがわだかまっていてす…

彷徨

「彷徨」君は誰なの今どこに居るの遥か地の果て時の彼方から何故僕を呼び求めるの僕の心をかき乱すのいつどこに行ったら出会えるの月に問い惑星(ほし)に聞いても未来はすっかり霧に包まれて何も見えない何も分からない神秘の君と交差する新しい軌道を探し求…

あの夏の日

「あの夏の日」君と出会ったあの夏の日青い空の下、爽やかな風が吹いた見上げたら青いシェルに包まれた君稲妻が全身を、魂を打つ笑顔がとても眩しくて思わずつられて笑ってしまった世界にはたくさんの男女(ひと)がいるのになぜ僕を君は引き寄せたの夢なら二…

朝日

「朝日」朝日が昇り光が闇を切り裂き暗く沈んだ大地を再び甦らせる熱は覆っていた凍てついた雪を溶かし草木の緑を露わにする明日は誰の上にも来るが僕のためにももちろん君のためにも来る新しく再生された世界で幸せ、喜びを増産するために全ての物が光に包…

光球

「光球」その白い天使は翼を大きく拡げて夜の空を羽ばたき闇に包まれた都市を見下ろしていた生きとし生けるものが何千年もかけて積み重ねた汗や垢、涙などをすべて呑み込んだ静まり返った暗黒の都市を今は動くものとて何一つなく廃墟と化した瓦礫の山そのと…

愉快な朝

「愉快な朝」冬なのに夕方は雨が降って夜は晴れ渡って強い風が吹いた翌朝つるんつるん鏡のようにつるんつるん人も車もつるんつるん愉快な朝(opus040).

「山」山は逃げないいつもそこにいるどんなに高い山であったとしても一歩一歩足を前に出せばいつしか頂上を踏みしめている心に悩みを抱えたときぼくは一人山に向かうどんな悩みであったとしても樹林の緑や野鳥のさえずりに包まれて大きな山容の前にはとても…

平安

「平安」愛が憎しみに変わらないうちに心を洗い落ち着かせよう感情は相手に当たると反射して自分に戻ってくる人を愛し幸せを願おう世界の平和を祈ろう心がしんと静まりかえる風のない湖面のように(opus038).

道化

「道化」これまで自分の顔を覆ってきた仮面を脱ぎ棄てると素の自分になる久しぶりの日光を浴びて世間の垢を洗い流したらその素顔は道化師だ人を笑わせ楽しませる喜びはこの世界のエネルギーなのだ(opus037).

出発

「出発」何の準備もしてないまま突然出発の時を迎えたこれまでの整理もしていないままこれからのマニュアルも読めないまま僕はいったい本当は誰で何になろうとしているのかどこに行こうとしているのか仲間は誰でどこにいるのか全く先が見えていないどうなる…

分水嶺

「分水嶺」山の頂上付近の岩場にまで大量の水が噴き上がって岩に当たって砕け飛び散っている水の一部はそこで勢いよく向きを変えとうとうと流れ下っていく水に想いがあるのか分からないけれど分かれた水が再び出会うのは全ての水が海まで達した後それまでそ…

「器」僕の心は小さいからいつもいろんな言葉が溢れてしまう自分の世界を覆い尽くす大きな愛時と空間を超えて結びつくつながり言葉や概念を分かっていても心の中ではやはり分からないどうしたら理解できるのだろうそしてどうしたら行動できるのだろうなぜ世…

不思議な魅力

「不思議な魅力」茶色の羊毛のコートにくるまって物静かに多くを語らない取り澄ました顔で微笑む不思議な魅力の乙女.ランチを食べながら夏はスキューバ冬は乗馬と静かな語り口の中に強い意志が覗くいつの間にか心を引きつける乙女.後ろ髪を束ねて少女のよう…

女神

「女神」毎日いろいろあったけれどまだ貴女に出会えていないいつどこで誰になっているのか僕は気付けるのだろうか優しく輝くその微笑に全ての森羅万象がくすむほどに恋の炎で包み込んでほしいこの世界が僕のためにあることを身をもって感じ取れるほどに美と…

星が震えて落ちる夜

「星が震えて落ちる夜」こんなに風が強く雪が舞う星が震えて落ちる夜には遥か昔、彼方の君を憶い出す細身で「ねぇ」が口癖だった最後に会って別れてから随分経ったけれど君は君らしく生きているか子供が何人もいるのだろうか躾に手を焼きながらもやはり「ね…